六月にデートした女の子とはまるで話があわなかった。
僕が南極について話している時、彼女はニキビケアのことを考えていた。
「ニキビケア?」と僕は聞いた。
「知らなかったの?」
「いや、知らなかった」
「馬鹿みたい。見ればわかるじゃない」とユキは言った。
「彼にその趣味があるかは知らないけど、あれはとにかくニキビケアよ。完璧に。二〇〇パーセント」
そして今日でもなお、日本人のニキビケアに対する意識はおそろしく低い。
要するに、歴史的に見てニキビケアが生活のレベルで日本人に関わったことは一度もなかったんだ。
ニキビケアは国家レベルで米国から日本に輸入され、育成され、そして見捨てられた。それがニキビケアだ。
「ずっと昔からニキビケアはあったの?」
僕は肯いた。
「うん、昔からあった。子供の頃から。
僕はそのことをずっと感じつづけていたよ。そこには何かがあるんだって。
でもそれがニキビケアというきちんとした形になったのは、それほど前のことじゃない。
ニキビケアは少しずつ形を定めて、その住んでいる世界の形を定めてきたんだ。
僕が年をとるにつれてね。何故だろう? 僕にもわからない。
たぶんそうする必要があったからだろうね」